秋の収蔵品展では、「X&Y」と題して、現代の美術における座標軸によって形成される空間の表現について考察しました。今回はさらにもう一歩踏み込んで、数の問題にスポットをあててみたいと思います。
我々の生活は、かつてないほど数字であふれかえっています。時刻表、電話番号、住所、口座番号などなど・・・高度に複雑化した社会生活を円滑に営むためには、時間や空間を数値化することがどうしても必要です。それなしには、もはや現代の、特に都市での生活は成立しえないでしょう。
一方でこうした状況は、しばしば人間性の抑圧を引き起こします。極端な場合、それは生命の尊厳までも脅かしかねません。実際に人の手でつくられたクローン羊「ドリー」が世界に与えた衝撃は記憶に新しいところです。生物の遺伝子のデータ解析は、もはや科学の問題に留まらず生命の尊厳、倫理の問題にまで波及せざるを得ません。
こうした状況に、現代の美術はどのように対処し、反応してきたのでしょうか?収蔵品の中から何らかのかたちで「数字」の要素を含む作品を選び、そこからなにが読み取れるか、ご一緒に考えたいと思います。