榊原紫峰(1887~1971)という画家をご存知でしょうか。大正から昭和にかけて京都で活躍し、鳥や虫、花や木に限りない愛情を注ぎながら、生涯花鳥画を描きつづけた画家です。京都市立絵画専門学校で竹内栖鳳や山元春挙らに学び、伝統的な写生技術を習得した紫峰は、西洋絵画の写実性や琳派の装飾性などを研究した革新的な作品を描き、文展で頭角をあらわします。大正7年には、より自由な制作と発表の場を求め、土田麦僊や村上華岳らとともに国画創作協会を結成。清新な意欲作を次々と発表しました。国展解散後は画壇から離れ、孤高の生活の中で、ひたすら花鳥と向き合い制作を続けます。晩年に描かれた枯淡の味わいある水墨画は、紫峰芸術がたどりついた境地といえるでしょう。
足立美術館の紫峰コレクションは約90点におよび、その数は日本一を誇ります。
本展は、紫峰の生誕120年を記念し、当館のコレクションの中から初公開作品を含む約40点を一堂に展示いたします。自然を深く愛し、生活のすべてを捧げて制作に打ち込んだ紫峰芸術の全貌を明らかにし、その魅力に迫ります。