能舞台を華やかに彩る、唐織。主に女性を演じる際の表着に使用されますが、もともとは織物の名称でした。唐織は室町時代末期から日本で織られるようになり、刺繍のような風合い、ヴァリエーション豊かな模様表現が、中国にはない日本独特の織物です。それなのに「唐織」の意味は「中国風の織物」なのですから不思議です。一言に「唐織」といっても、時代や使い途によってさまざま。金糸のきらびやかさも最初からではなく、元禄文化とともに華開きました。唐織の模様や色の表現が多様に展開するのも、年齢や身分など主人公の性格を象徴する演出効果が込められているからです。能舞台から生まれ、卓越した織物技術を誇る唐織の精髄をご覧ください。