杉本美術館は、来年4月に開館20周年を迎えます。
そこで、今回からの展示は、この杉本美術館の源となった杉本画伯の画業を象徴する分野の作品を展示します。
そのうち、今回は「ほとけ」をテーマにいたします。杉本画伯は昭和15年初めて奈良に写生旅行に出ました。奈良には寺院はもちろんですが、博物館にも、街道の山道にもさまざまな「ほとけ」がありました。
この「ほとけ」の姿に杉本画伯は魅了され、寺々を訪れ、山道を歩き、博物館に入り、戦中戦後の困難な時代、奈良の風物とともに「ほとけ」のスケッチにはげみ、技を磨き、精神的なバックボーンを形成していきました。
以後、2004年に98歳でこの世を去るまで、「ほとけ」は杉本画伯の画業や人となりを基礎付ける、欠くことのできない要素となっています。
今回の展示作品の中に、「心造如来」と題して如来と鹿や鳥、かえるや亀などが描かれた作品があります。この絵に象徴的に表されているように、生きとし生けるものへの慈しみは「ほとけ」の心であるとともに、杉本画伯の作品の心でもあります。今回の作品をご覧になって、心休まるひとときをお過ごしいただければ幸いです。