華麗な女房姿装束に、流れるような漆黒の髪が映える、優雅この上ない女人の後ろすがた。歌人としても名高い小野小町が、詩作にふける場面をとらえたこの作品は、佐竹本三十六歌仙絵の中でも白眉の一点といえましょう。
古来の名だたる歌人(歌仙)たちの和歌に、その絵姿を描き添える「歌仙絵」は、中世より連綿と制作されてきました。この佐竹本は、数ある歌仙絵のなかでもっと古く、また優れた逸品として知られ、秋田の佐竹公爵家に伝来した由来からこの名で呼ばれています。この度の特集では、拡大写真のパネルも用いて、やまと絵の粋を凝らした佐竹本を細部までご覧頂き、書と画が織り成す歌仙絵の世界をご鑑賞頂きたいと思います。