ハンス・ペーター・クーン(1952-)は、キールに生まれ、ベルリンに在住する、ドイツを代表するアーティストの一人です。
早い時期から音楽に軸を置いた芸術的な創作的な活動を目指しました。1990年に、舞台の音楽製作への評価から、ニューヨークでベッシー賞を受賞したのをはじめ、1993年のヴェネチア・ビエンナーレではロバート・ウィルソンと共に制作したインスタレーションで金獅子賞を受賞するなどし、世界を舞台にした制作活動は、年を追うごとに質と評価を高めてきました。当館でも、2003年度開催の〈シーニック・アイ 美術と劇場〉展において、その作品を体験することができました。これは、スケールが小ぶりであるのに、ダイナミックなストーリーを湛えた作品で、来館者の多くにとても興味を持たれたものです。
クーンはまた、建築にも関わりながら制作しています。例えば、同じくベルリン在住の建築家、ダニエル・リーベスキントが新しくデザインした、オスナブリュックにあるフェリックス=ヌスバウム美術館の通路の素晴らしい音響インスタレーションは、オープニングの後、この建築家が、美術館に常設を懇願した作品です。
他にも、クーンの作品は多様に展開し、ヴォリュームを増して、都市空間や曠野にまで迫り、表現の限りない可能性を感じさせてくれます。
現在、ヨーロッパを中心として、最も活躍するアーティストの一人をここに紹介できることを誇らしく、幸いに思います。