アメリカ・カリフォルニアのプライスコレクションは、魅力に満ちた江戸絵画のコレクションとして世界的に知られています。半世紀前、ジョー・プライス氏は当時美術史家にも見過ごされていた江戸時代の個性的な画家たちの作品に目を奪われ、収集を始めました。プライス氏の財団の名前として用いられている「心遠館(しんえんかん)」が、近年人気を高めている伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)の堂号「心遠館」由来していることからもわかるように、コレクションの中心は若冲の作品です。また、円山応拳(まるやまおうきょ)、長沢芦雪(ながさわろせつ)、森狙仙(もりそせん)を中心とした上方の画家や、酒井抱一(さかいほういつ)、鈴木其一(すずききいつ)などの江戸琳派の画家たち、あるいは肉筆浮世絵など、近年になって大きな関心が寄せられるようになったジャンルのすぐれた作品が数多くコレクションされています。
展覧会では、プライスコレクションの約600点の絵画作品の中から、プライス氏と東京国立博物館が共同で選んだ101点を展示いたします。今回はとくに、ガラスケースを用いず、光の効果に工夫を凝らした展示室を1室設けました。光の変化によってさまざまに変わる絵の表情をお楽しみください。