マウリッツ・コルリネス・エッシャーは、1898年、オランダのフリースラント州レーワールデンで生まれました。
建築家になることが夢であったエッシャーは、1919年、ノルトホラント州ハールレムの建築装飾美術学校に進学。同校のサミュエル教師は、エッシャーがグラフィック・アートに向いていると考え、ウッドカット(板目木版)、リトグラフ(石版)、エッチング(銅版)など、さまざまな版画技法を教授し、版画の面白さに目覚めたエッシャーは、これらの技法を急速に身に付けていきました。
また、1922年、友人とともにイタリアを訪れたエッシャーは、イタリアの風景、芸術の素晴らしさに触れ、その後、イタリアの街や風景を題材とした興味深い版画作品を数多く残しますが、特に多大な影響を与えたのが、続いて訪れたスペインのグラナダにあるアルハンブラ宮殿の幾何学的装飾文様でした。この出会いは、変容、循環、無限、二次元と三次元の相克といった抽象的概念をテーマとして、見えない世界の独自の構造化に挑む、エッシャーのだまし絵の世界を生み出す豊かな源泉となってきました。
今回の展覧会では、1968年、ハーグ市立美術館での回顧展の大成功により、オランダを代表する作家のひとりになった「エッシャーの不思議な世界」の魅力の全貌をハウステンボス美術館が所蔵するコレクションの中から、厳選した作品と関連資料により紹介します。