創造の楽しみを与えてくれるプラモデル。戦車、飛行機、船、ロボット・・・、夢や憧れを形にして所有できるプラモデルは、高度成長期の世相を受けながら多くの子どもたちの支持を集め、以後今日まで大きく発展してきました。ワクワクしながらパーツを組み立て形にしていく喜びは、プラモデルというホビーならではの快楽と言えましょう。
そのキットの「顔」となるのが、ボックスアート(箱絵)です。消費者の購買欲を高めることを目的に描かれたボックスアートは、パッケージの装飾という役割を大きく超え、作る過程で完成型を想起する「資料」であり、プラモデルを手にして空想の世界に遊ぶための物語を生み出す「素材」でもありました。
戦中から戦後にかけて氾濫したビジュアルイメージを受け継いで成立したボックスアートは、戦後の大衆的な表現の「主流」を示すものであり、その点では戦後日本の社会性を検証するうえでも注目すべき絵画様式です。
本展は、戦時下の表現が戦後どのように継承されていったのかをプラモデルのボックスアートというジャンルをとおして再検証しようという初の試みです。プラモデル草創期から現在に至るまで世に送り出された時代を代表するプラモデルのボックスアート約160点を展示するとともに、戦中・戦後の教材模型からソリッドモデル(木製模型)を経てプラモデルが誕生する過程を各種資料で振り返りつつ、ボックスアートの絵画様式が成立した要因を探ります。
併せて、懐かしいプラモデルの数々や、国内を代表するモデラーによるジオラマ作品も展示し、プラモデルの歴史を総体的に紹介します。