江戸の庶民が生み出した浮世絵版画は、絵師・彫師・摺師の共同作業によって作られました。
当時、浮世絵師は徒弟制度にもとづいて、師匠に弟子入りし、師匠の指導のもとに腕を磨いていきました。そして、一人前と認められた者には、師匠の名から一字譲り受けて絵師名を名乗ることが許されます。たとえば歌川広重の名は、師匠である豊広から「広」の字を譲り受けたものです。
また、弟子が師匠の名をそのまま襲名することもあります。たとえば広重の名は、初代の没後、門人の重宣によって襲名されます。その二代目が一門を去ると、同じく初代の門人の重政が広重の名を襲名しました。
この展覧会では、初代・三代豊国、初代・二代・三代広重など、師匠と弟子の作品を見比べることで、共通点や違いをご覧いただきます。そこには「流派」と「個性」の関わりなど、現在の表現活動や経済活動にも通じるテーマが浮かび上がってきます。