福山市新市町出身で、現在ニューヨークを拠点にアジア、ヨーロッパと国内外で幅広く活躍する野田正明。本展では、その初期から近作にいたる版画作品をはじめ、近年とくに新たな展開が見られる絵画、立体作品などにより、野田芸術の全貌を紹介するものです。
1977年、野田が渡米後にニューヨークで手がけたシルクスクリーンによる版画は、70回から100回以上も色を刷り重ねて完成されるという、極めて緻密な工程を経た高度なものへと発展していきます。「Dimension(次元)」シリーズなどをはじめとする、それらの作品は、透明感があり、心地よい清涼感を多くの人に感じさせるとともに、螺旋状に激しく渦巻く雲や水の流れを思わせる独特の抽象表現によって、洗練されたニューヨークにおいても高く評価され、注目を集めてきました。
2002年には「紙上の一世紀、アート・スチューデンツ・リーグ作家の版画1901-2001」展の出品作家として、同校(1875年創立の美術学校)の100年間の作家の1人にも選出されました。2003年には、中国・深しんせんでの個展をはじめ、深美術館前にモニュメント《飛翔 IV 天空昇》が設置され、これを機に2005年、ギリシャ・デルフィ(アポロ神殿のとなり)においてもステンレス製の高さ3.8mの《アポロの鏡》が永久設置されるなど、その活動の領域も国際的に広がりつつあります。
本展では、時代とともに目まぐるしく変貌するニューヨークのなかで、アーティストとして生きる野田の現代へのメッセージをお伝えいたします。